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zoom RSS 色即是空 恋愛日記小説vol.1

<<   作成日時 : 2005/03/30 13:12   >>

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空は暗く、厚く積もった雲は月の光を通さない。もうじき春になるというにも関わらず、風は身を切るように冷たかった。

男は女を抱きながら思う。
今自分の胸に顔を埋めている女。女はきっと、求めている。

――何を?

そんなものは知れたことではない。人が個人である以上、その想いを他人に伝えることなど100%できないのだ。心など目に見えるものではないというのに。形をなして在るものではないというのに。それでも人は、人を求めるのか。女の髪を撫でながら、どこか冷めた頭で男は思う。気温の所為か。

どれくらいそうしていただろうか。女の両手はいじらしく背中に回されている。体温はお互いを温めてすぐに外気に奪われる。寒い。足が震える。

「またしばらくは会えないね」

女は言う。そうなのだ、しばらくは会えない。男と女の住む場所には少々距離があるのだった。しかししばらくという言葉はひどく曖昧なものであるから、男はふともどかしくなって一、二週間くらいかな、と返した。冷たい風がふうと頬を撫でる。女は何も言わず男を抱く腕に力を込めた。何ヶ月何年も会えないという訳ではないし、毎日毎日べったりとくっついているわけにはいかないから、そんなものだろうなと男は考えていた。それでも不器用に自分の背中を蠢く女の指を感じて、男は女を抱き返す。

「こうやってくっついてると、言葉では通じないことも伝わるかな」

男は何も返せない。やはり。人は潜在的に、自分が孤独だということを知っている。何も伝わらない、伝えられないということを解っている。そんなことはとうに気づいていたこと。だとしても。そうだとしても、男は伝わっているぞという自分の叫び声を、確かに自分の内に聞いたのだった。

女の背中に回した手首に目をやり、時間を確認する。もう時間はない。
「行こう」
男はしっかりと女の手を握り、寂れた夜の街中の公園を後にした。

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